一時停止↑
船室の小窓のアクリル板に鼻を押しつけて、嵐の海を眺めてみる。まわりにそびえて並ぶ無数の頂を、山小屋の窓から見上げるようだ。いたるところに急斜面、谷、がけ、頂上が次々と現れては消え、景色は絶え間もなく変化する。これほど波が高く、苦しく、これほど陸と違った世界とは、想像さえもしなかった。
ぼくは海を甘く見ていた、海を少しも知っていなかった。