一時停止↑
ハッチを閉めると、内側から金具でロックした。出入口と換気口、給排水口も閉じれば、ヨットは波間に漂うカプセルだ。上下が逆になっても、沈没の危険は少しもない。どんな大波を受けても不安はない。
が、その安心感は、さらに強まる波の衝撃で、急速に薄れ始めていく。ヨットを打つ波は、水というのに固体の何か、貨物船から落ちて漂う鉄のコンテナか、大きな流木かクジラのようだ。体が地面に激しく落下したように、波の衝撃が痛いほど全身に響き、強烈な打撃音が耳をキーンと唸らせる。いつまで体がもつだろう。
大波が次々と船体を襲うたび、木材を折るようなキシミ音が鳴り響く。どうにかしなくては、強化プラスチックの五ミリ厚の船腹が、波の力で疲労破壊され、[青海]は沈没してしまう。