一時停止↑
パタゴニアを走るヨットは、マゼラン海峡を越え、ビーグル水道をしばらく進み、Puerto Ferrariに錨を打った。
早朝、出発準備のため目覚めると、東の空は桃色に染まり、静まりかえった湾内には、かすかな風も波もない。
ボートを漕いで、ヨットの写真を撮りに行く。と同時に、鏡のように山々を写した水面は、急に細波に覆われて、逆立ちの山々はかき消えた。陽が昇る直前に訪れた、一瞬の凪だったのか。
それにしても、こんな景色の中にいることが、自分にとっての現実だった。夢を見ているような体験が、疑いもなく現実だった。日本の街での生活こそが、夢の中の出来事だった。