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-- これは実話です --
白い幻影
blue iceberg
海面上の高さ5mを超えるものを「氷山」と呼ぶ。体積の約9割が水面下に隠れ、その部分の形状は推測困難である。海中で横に大きく突き出している場合、通過する船舶の底に触れ、被害を与えることもあるという。不用意に接近しないよう注意が必要である。


**当エピソードは、こちらをご覧ください。



 解説

月刊<舵>201206月号より。



徹夜の南極航海です。

南極の入口、デセプション島に着いた<青海>は、一日半の休息をとった後、 南極大陸に向けてさらに南下を開始します。

とはいえ、次の目的地メルキョー群島まで200kmほどもあります。海図や水路誌を調べても、途中に停泊できそうな湾はありません。<青海>の速度はせいぜい4ノット、時速7km程度ですから、順調でも27時間ほど必要です。つまり、徹夜で走る2日がかりの航海になります。
to Melchior island in the antarctic
しかし、これは大問題でした。未調査の部分が少なくない南極沿岸を夜間に走るのは、とても危険なことだからです。闇の中で、海図に描かれていない暗礁に乗り上げないでしょうか? 氷山に衝突するかもしれません。とはいえ、途中に安全な停泊場所がない以上、ともかく徹夜で航海するしかないのです。
leaving Deception island
<青海>がデセプション島を出た際の写真です。走る船尾を追うように、海面には魚が跳ねています。と思って双眼鏡を向けると、それはペンギンたちでした。クチバシがオレンジ色ですね。ジェントゥーペンギンという種類です。
icebergs
やがて、幾つかの氷山に出合いました。奇妙な形ですね。左手遠くに、もう一個の氷山が見えます。夜間、知らないうちに衝突するかもしれません。そろそろ日暮れが迫っていたのです。


ところで、氷山って何でしょう。海に浮かんでいる氷のことでしょうか? でも、大きさは?  以下に記したのは、International Ice patrol という組織により定められた、氷山の定義 です。

  1. グローラー(Growler)--------高さ1m以下、長さ5m以下
  2. バーギービット(Bergy Bit)--高さ1-5m、長さ5-15m
  3. 小氷山(small)--------------高さ5-15m、長さ15-60m
  4. 中氷山(Medium)-------------高さ15-45m、長さ60-120m
  5. 大氷山(Large)--------------高さ45-75m、長さ120-200m
  6. 巨大氷山(Very Large)-------高さ75m以上、長さ200m以上

以上を見ると、高さ5m以上なければ氷山と言わないようですね。<青海>のマストの高さが約10mですから、少なくともマストの半分ほど、スプレッダー程度の高さが必要です。
size of icebergs
    では次に氷山の形による分類を見てみましょう。
  1. テーブル型(Tabular)
  2. ドーム型(Dome)
  3. ブロック型(Blocky)
  4. くさび型(Wdge)
  5. ドライドック型(Drydock)
  6. 尖塔型(Pinnacle)
以上の6つに分類されています。
types of icebergs
ドライドック型というのは、氷山にU字型の切れ込みが入り、それが水面もしくは水面下に達するもので、近接した2個の氷山に見えることがあります。

ところで、これらの氷山、水面下の形はどうなっているのでしょうか? 答えは、「全く想像がつかない」というものです。

御存知のように、氷山の90%(体積)は水面下にありますが、その形を推測するのは困難です。下の写真、<青海>の近くに浮いていたグローラーをデッキから撮影したものですが、水面下の形が見えないように隠しています。下がどうなっているか、想像出来ますか? 頭の中にイメージを描いてから、マウスで写真をクリックしてください。イメージしてからですよ!


iceberg model

どうです? 意外だったでしょう。 氷山にむやみに近づくと、水中で横に突き出す氷に船底が衝突することも分かるでしょう。これは実写したものですが、下はインターネット上で見つけた合成写真です。

iceberg underwater
( Created by Uwe Kils CC BY-SA 3.0)
氷山に近づくと危険な理由は、水中で氷が横に突き出していることばかりではありません。実は氷山は刻々と溶けていますから、そのためにバランスが変わり、急に回転する場合があるというのです。実際、上の写真の氷山は、縦よりも横になった方が安定するようにも見えます。こんな氷山がグルリと回ったら、付近にいる小さな<青海>は、ひとたまりもありませんね。
(続く....かも)


このページの白い背景は、南極大陸の雪面写真から作成しました。

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