220万円で買った、中古のヨット。
やっと手に入れた、小さなヨット。
世界一周には小さすぎる、白いヨット。
青い水面に二枚の帆を揚げて、ぼくはひとりで海原に飛び出した。
旅がいつまで続くのか、どこまで行き着けるのか、いつ帰って来られるか、本当に帰って来られるか、見当すらもつかなかった。
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Model |
BW24C |
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L.O.A . (全長) |
7.5m |
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Beam(全幅) |
2.3m |
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Draft (喫水) |
1.5m |
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Displacement(排水量) |
2.3t |
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Ballast (バラスト) |
0.88t |
●航海記の要約●
内陸の盆地、盛岡で育ったぼくが、中学生のとき、
「魚が海にいるって本当? 店の魚は工場で作るのかもしれないよ」
と友人に言われ、地球は自分の住む星なのに、その七割を覆う海を知らないと気がついた。
大学生になって、ヨットを始める。やがて就職して金を貯め、小さなヨットを買うと、海を命がけで知るための、単独航海に出発した。
嵐の恐怖で、ときには体が動かなくなりながら、二か月もかかって地球を四分の一周し、アメリカのサンフランシスコに着くと、めぐりあった奇妙な老人が、南米チリの多島海に行けと言う。地球に残る最後の秘境を旅しろと言う。
北米を離れたヨットは、赤道で赤い線を見たり、クラゲの大群に囲まれたり、貿易風や赤道無風帯を体験したりしながら、南米大陸に三か月がかりで辿り着く。港の町で、ラテンアメリカの習慣に目を白黒させ、心優しい人達に助けられ、ついにはチリ多島海を走りだす。
そこは天国とも地獄ともつかない海だった。台風並みの烈風に次々と襲われ、ペンギンのステーキを味わい、原住民と物々交換をおこない、魔物の住処のようなフィヨルドの中、現実離れした不思議な日々が過ぎていく。
チリ多島海の通過に成功し、航海の腕に自信を深めると、次は無謀にも南極に向けて帆を揚げた。が、嵐で転覆し、マストを失い、漂流するように陸まで戻り着く。ヨットの旅はもうやめよう、次に失敗したら命はないと、ひとりで悩み続けたが、夢を捨てることはできなかった。
翌年、再び南極に挑戦し、どうにか到達を果たす。しかし、すでに冬が迫り、海は凍り始めていた。連日の吹雪に阻まれて、引き返すのも不可能だ。ヨットも自分も、いまに凍りついてしまうだろう。近くの観測基地を訪ね、一緒に越冬させてほしいと頼んでも、聞き入れてくれる人はない。
覚悟を決めると、嵐の合間を縫って決死の脱出を試みる。一度は失敗、二度目の挑戦の末、ついに氷海を突破して南極を離れるが、そこには荒れ狂う南氷洋が待っていた。
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